伝統工芸の世界では後継者不足が深刻な問題とされる中、神之木町で女性職人の鈴木和美さんが友禅染の工房「花ずみ工房」を営んでいる。独立して20年の節目を迎えた鈴木さんに、友禅の魅力と作品に懸ける思いを取材した。
鈴木さんが友禅染を始めたのは33年前。武蔵野美術短期大学でアパレル量産型デザインを学んだが、卒業後に一点物の伝統工芸に興味を持ち、中でも完成までの全工程に携われる「友禅」に心惹かれた。
師事したのは東京都練馬区に工房を構える友禅作家・生駒暉夫さん。長年アシスタントを採用していなかった生駒さんの一番弟子として、2年間マンツーマンで友禅染のいろはを学んだ。
この経験が糧となり、友禅染を始めた2年後の1989年には東京都染芸展青染会で技術賞を獲得し、以降6年連続で「染芸展賞」「奨励賞」などを受賞。その後も入選を重ねた。
世代・国境超えて
2000年に独立し、自身の工房を構えてからは、図案から下絵、糊置き、色挿し、地染めといった一連の工程を1人で担っている。
特注の依頼が多いため、特に時間をかけるのは最初の図案作成。生地の色や挿す色合いなどのイメージを思い浮かべながら描いていく。「手描友禅は線だけで誰が描いたかわかるくらい、個性が出るんです。そのくらい染めの中でも繊細な表現ができるのが友禅なんですよ」と話す。
顧客の年齢層は40代〜60代を中心に、20代半ばの若者も。今までなかったようなオリジナル柄を楽しむ若者たちから、新鮮さと刺激を得ている。また、国境を越え海外や在日外国人から注文が入ることもある。
鈴木さんは「着物はメンテナンスをすれば何世代にもわたって、親から子へ、子から孫へと受け継いでいけるもの。お気に入りの柄に修繕することもできるし、帯の組み合わせを変えたり、小物で遊んだりもできるんです」と魅力を語る。
作り手の顔が見える時代
後継者不足は、取引先のゆのし屋や染み抜き屋でも深刻な課題となっているが、鈴木さんは「SNSなどの普及で、以前より作り手とお客さんの距離が近くなれた」と利点も見出す。「SNSや展示会の場など開かれた環境を活用すれば直接話ができて、よりニーズを引き出せる」。
伝統工芸の現場も、時代の潮流に合わせて変化を遂げながら、次世代へと受け継がれていく。
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